子供には親に養育される権利、すなわち「親権」がありますので、離婚をするにあたって、未成年の子供がいる場合は考えなくてはなりません。
どうやって親権が決められるのか?
親権がなくても育てられるのか?
「親権」は2つの役割を持つ、子供のための権利
離婚を決めるときには自分たちの心配だけではなく、子供のメンタルケアにも気を配ることが必至です
子供がいる場合の離婚で、まず考えるべきは「親権者を誰にするか?」という問題です。未成年の子供は、どちらかの親の戸籍に入る必要があるからです。また、親権者を決めていなければ離婚ができないという現実もあります。
親権者の役割
- 「身上監護権」…おもに子供の身の回りの世話をしたり、教育をしたりすること
- 「財産管理権」…子供に財産があればそれを管理したり、契約や訴訟の際には子供に代わって法律行為をすること
いずれも親のためではなく、子供のための権利です。
また、離婚届には未成年の子供の親権者を記載する欄があります。親権者の記載がなければ離婚は成立しないので、離婚をする前に親権者をどうするかを決めておく必要があるのです。
「先に離婚をして、後から子供のことを~」「とりあえずどちらかが親権者になって~」などと考えるのではなく、その後のもろもろの手続きもありますので、親としての役割の重要性を考えつつ、夫婦で十分に相談をしてから親権を決めます。
◇「親権者」はどうやって決まる?
「どちらの親が親権者になれば、子供にとって利益があって幸福か?」これが、親権者を決める際の大原則です。一般的には、婚姻中に子供を監護養育していた親を優先的に親権者としますが、いろいろなケースで親権者を決めるパターンもあります。
■子供の年齢が10歳未満なら……
衣食住全般など子供の世話をするのは母親のほうが向いていることが多いので、母親が親権者になるケースが多い
■子供の年齢が10~15歳なら……
子供の精神的、肉体的な発育状況によっては、子供の意志を尊重して親権者を決定
■子供の年齢が15~20歳なら……
子供が自分で判断できるため、原則としては子供の意志を尊重
家庭裁判所でも子供の意見を聞くことが定められている
■子供が複数の場合……
「親の都合で兄弟姉妹を引き離すべきではない」との考えが主流であるため、一方の親が全未成年子の親権者になるのが望ましいとされている
■共稼ぎで養育に経済的な問題がない場合……
面接権は自由にして、子育ての協力体制を維持するというケースがある
近所に住むことによって、保育園の送迎やイベントへの参加など片方をフォローしながら子育てをしていくことも可能
■子供の苗字を変えたくない場合……
離婚の日から3ヵ月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出すれば婚姻時と同じ苗字を使うことができる
旧姓に戻したくない事情がある場合は、これを活用するという方法もある
◇「監護者」として子供と暮らす方法
「どうしても子供と一緒に暮らしたい」「夫に子供を渡したくない」となどと親権にこだわりすぎて離婚の手続きがなかなか進まないというケースもあります。
そんなときは、「親権は夫にゆずって自分は監護者になる」という選択方法もあります。
「監護者」とは、実際に子供を引き取って育てる者のことをいい、戸籍上は「親」としての記載はないものの、実際に子供と暮らし、養育費を受け取ることで子供と生活をしていかれるというわけです。メリットととしては、離婚や親権に関して早い解決ができ、精神的にも安定し、親権を譲ることで相手が子供に対しての養育費などの責任を果たしてくれます。
◇「親権者」の変更はできる?
一度、決めた親権者を変更するには、家庭裁判所で親権者変更の調停か審判が必要になります。
これは、親の都合で子供が“たらい回し”になるのを避ける意味もあって、当事者同士の協議では決定できないことになっているからです。
変更の申し立ては、子供の両親か祖母や祖父母など親族ならできますが、子供本人ではできません。
また、親権者と監護者が異なる場合でも、必要があれば監護者の変更もできます。
親権者の申し立てがなされた後は、家庭裁判所の調査官が現状を調べることになります。
【親権者の変更が認められる場合】
■親権者が長期入院や海外赴任などで、子供の世話ができなくなった
■親権者の再婚相手と子どもがうまくいかない
■親権者が行方不明になった
■子供への暴行や虐待、労働の強制など養育する意志が認められない
■管理が不適当で、子供の財産をおびやかした
もし、親権者がいなくなったとしても、もう片方の親が自動的に親権者になることはありません。
親権者になるには、上記と同様に親権者変更の申し立てを行うことになります。